2026年9月4日金曜日

ハイモンド縦ぶれ電鍵を打ち比べる ― HK-1Z・HK-808・HK-802は何が違うのか

当局の結論。この3台に「どれが一番いい電鍵か」という答えはない。あるのは方向性の違いだけである。

同じハイモンドの縦ぶれ電鍵でありながら、HK-1Z、HK-808、HK-802は打鍵感の設計思想がまるで違う。特にHK-1ZとHK-802は、優劣ではなく「好み」と「打ち方」で評価が真っ二つに分かれるタイプだと思う。

前回、当局が入手した古いハイモンドの大理石電鍵 HK-1Z について、その歴史と設計思想を書いた。φ6mmという巨大な銀接点、大電流キーイングを前提とした構造、大理石と黒色下部ベースの組み合わせ ―― あくまで「もの」としての話だった。

今回はその続きである。あの設計は、実際に指へどう返ってくるのか。

手元のHK-808、HK-802と並べて打ち比べてみたら、これが想像以上に面白かった。以下、当局の実感とWeb上の各種レビュー・A1 CLUBの資料を突き合わせながら整理してみる。

今回の3つのポイント

  1. HK-1Zは「コツッ」なのに柔らかい。大径接点が生む独特の粘りがあり、しかも個体差が大きい。
  2. HK-808は「ドライで軽快」。接点は明確なのにレバーは滑らか ―― バネ圧の重さと機構の軽さは別物である。
  3. HK-802は別系統。スウェーデン式に近い構造で、ほとんど力を要さず流れるように打てる。ただし独特の「ビーン」がある。












HK-1Z












HK-808












HK-802




3機種の打鍵感を項目別に整理してみた

まずは一覧で ―― 3機種・打鍵感比較

項目HK-1ZHK-808HK-802
打鍵感の一言柔らかく、粘りがあるドライで軽快滑らかでソフト
キーを押した感触コトッ、コツッと柔らかく受け止めるコツコツと明確トトトト…と流れる感じ
接点の感触大型接点特有の「粘り」接点のON/OFFが明瞭衝撃が少なく柔らかい
戻り穏やか。調整次第ではかなり良い速く、キレが良い滑らかで自然
反動少なめ比較的明確非常に少ない
硬さ柔らかめやや硬質~軽快ソフト
操作音コトコト系コツコツ・カチカチ系静かめ+「ビーン」という微振動あり
高速打鍵○~◎
長時間運用○~◎
反動式との相性非常に良いとの評価あり相性良好打ち方がやや異なる
精密感○~◎
個性非常に強い万能型独特
向いている人打鍵そのものを味わいたいCWマン癖なく高速に打ちたい人軽い力で長時間打ちたい人

1. HK-1Z ――「コツッ」なのに柔らかい、不思議な電鍵

今回いちばん興味深かったのがHK-1Zだった。

当局の感覚でも、大径の接点は「コツコツと決まる」。ところが同時に、HK-808にはない柔らかさを持っている。この二つが同居しているのが不思議なのだ。

Web上の各種レビューでも、「接点が広いので、打った時に粘りがある」「すごく打ち心地がよく、柔らかい」といった表現が見られる。どうやら当局だけの錯覚ではないらしい。

普通の縦ぶれ電鍵の感触を言葉にすると、

押す → 接点に当たる → カツンと跳ね返される

という流れになる。ところがHK-1Zは、

押す → コトッと受け止められる → ゆったり戻る

に近い。「当たる」ではなく「受け止められる」。ここがこの電鍵の核心だと思う。

A1 CLUBのアンケートにも「接点が大きいので手首への衝撃がソフト」という証言がある。φ6mmという大接点は、大電流キーイングのための設計でありながら、結果として打鍵衝撃を分散するクッションにもなっていたわけだ。前回書いた「設計思想」が、そのまま指先の感触として返ってくる。これは正直、書いていて気持ちがいい。

同じHK-1Zでも、打ち味が違う

さらに面白いのは、HK-1Zを5台所有している方が「全部打ち味が違う」とWEBで書いていることだ。コツコツ、コトコト、カチカチ ―― 同じ型番なのに個体ごとに感触が異なるという。

これは古い電鍵ならではの魅力だと思う。HK-1Zという一つの打鍵感が存在するのではなく、個体そのものを味わう電鍵なのかもしれない。

中古で手に入れるとき、これは怖くもあり、楽しくもある。当局の一台がどんな性格なのかは、結局のところ打ってみるまで分からなかった。

2. HK-808 ――「ドライで軽い」ハイモンドの優等生

HK-808は、当局の感覚では「ドライで軽い感じ」で、非常に打ちやすい。

一方、Web上のユーザーは「固い感触だが精密感がある」と表現している。一見すると当局の印象と矛盾しているようだが、たぶんこの食い違いこそが重要だ。

バネ圧そのものの重さと、機構の動きの軽さは別物なのである。

分かりやすく言えば、自転車のブレーキレバーを想像してほしい。握り込む力が要るブレーキでも、レバーの軸がきちんと整備されていればスッと動く。逆に軽いバネでも軸が渋ければゴリゴリする。「重さ」と「滑らかさ」は別々に効いてくる。

HK-808はボールベアリング軸受けを採用し、滑らかな打鍵を狙った構造になっている。大理石ベースも重く、連続打鍵しても本体が動きにくい。だから、

指に感じる接点はコツコツ明確。しかしレバーそのものはスッと動く。

という一見矛盾した感触が成立する。CQオームに残るユーザーレビューでも「コツコツ感」「なかなかいい感触」という評価が見られる。

面白い弱点もある

HK-808では打鍵後に残響を感じる場合があり、人によっては違和感になるという指摘がある。またノブ位置が比較的高く、長時間の操作では手首への負担を感じる可能性も指摘されている。

ただし当局自身は、残響はあまり感じない。このあたりも個体差か、設置環境か、あるいは打ち方の違いなのだろう。

まとめると、HK-808は「切れ味」を楽しむ電鍵である。HK-1Zの「コトッ」と受け止める感覚とは、はっきり対照的だ。

3. HK-802 ―― ほかの2台とは設計思想そのものが違う

HK-802だけは、同じハイモンドでも別系統と考えた方がよさそうだ。

スウェーデンの「Swedish Pump Key」によく似た構造で、接点が支点より後ろ側に配置される独特の方式を採っている。A1 CLUBの資料でも「ソフトで非常に打ちやすい」と評価されている。












この構造だと、普通の縦ぶれのように接点が「ガツン」と指へ返ってきにくい。てこの支点の位置が違うのだから、力の返り方が変わるのは当然といえば当然である。

当局の感覚としてはこうだ。

  • 動きが非常に滑らか
  • 打鍵がほとんど力を必要としない
  • 長時間でも疲れにくい
  • 高速送信しやすい

ただし「ビーン」がある

HK-802には独特の「ビーン」という振動がある。鋼線のバネなどが共振し、電鍵自身が打鍵衝撃を吸収しているように感じられる。

打鍵後の残響は、HK-808よりはるかに大きい。これを嫌う人もいるし、「これこそ802だ」と感じる人もいる。まさに打鍵感の世界である。

当局は後者に近い。あの余韻を含めて802という電鍵なのだと思っている。




3台を擬音で比べてみる

結局、打鍵感というのは言葉にしづらい。ならば擬音でいくのが早い。

HK-1Zコトッ、コトッ、コトッ
HK-808コツッ、コツッ、コツッ
HK-802トトトトト……

並べてみると、性格の違いがはっきりする。

  • HK-1Zは「接点を感じながら打つ」
  • HK-808は「レバーを正確に操る」
  • HK-802は「滑らかに流す」

同じ縦ぶれ電鍵で、同じメーカーで、やっていることは「接点をON/OFFする」だけなのに、ここまで違う。面白いものだと思う。

まとめ ―― 優劣ではなく、方向性

冒頭に書いたとおり、この3台に順位はつけられない。

打鍵そのものを味わいたいならHK-1Z。癖なく正確に高速で打ちたいならHK-808。軽い力で長時間流したいならHK-802。用途と好みで選ぶべきものだ。

そしてHK-1Zについては、もう一つ付け加えておきたい。個体差があるということは、「自分の一台」を見つける楽しみがあるということでもある。同じ型番の電鍵を5台並べて打ち味を比べる ―― 一見すると酔狂だが、その気持ちはよく分かる。

当局のHK-1Zは、コトッと静かに受け止めてくれるタイプだった。前回の記事で調べた大接点の設計思想が、そのまま指先に返ってくる。古い電鍵を手に入れるというのは、こういうことなのだと思う。

参考:A1 CLUB 各種資料・アンケート、CQオーム掲載のユーザーレビュー、Web上の電鍵レビュー各種。打鍵感はきわめて主観的なもので、個体差・調整状態・設置環境によっても変わる。本記事はあくまで当局の手元の3台についての印象である。

73 de JI1ALP
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