2026年9月7日月曜日

ALL ASIA DX コンテスト(PHONE)参加記

50Wと釣り竿で「開いた瞬間」を拾う

スコアは 24局 × 16マルチ = 1,040点。数字だけ見れば控えめだが、今回のAA PHONEで得たものは点数ではなかった。50Wと釣り竿アンテナという当局の装備では、コンディションを「作る」ことはできない。できるのは、開いた瞬間にそこにいることだけだ。今回のログは、その一点に尽きる内容になった。

今回のポイント

① 21MHzは、一日に二度ちがう窓が開いた。
朝は北米・南米・アラスカ、夜は中東・地中海。同じバンドでも時間帯でまったく別の顔になる。
② 14MHzの10局は、深夜のわずか1時間に集中した。
ヨーロッパが聞こえ始めた瞬間に張りついたぶんだけ、素直に局数になった。
③ 二日目は強風と強雨。安全を優先してアンテナを撤去し、途中終了。
これも立派な運用判断だと、今は思っている。

当局の設備 ― いつもの一式

特別なことは何もしていない。いつもどおりの布陣である。

項目内容
リグFTDX-10(50W出力)
アンテナ釣り竿アンテナ(約5m)+ ATU
地上高約30m(10階ベランダ)
ロギングN1MM Logger+
部門SINGLE-OP / ALL BAND / LOW POWER / SSB

釣り竿の5mにATUを噛ませて全バンドに出る。効率で言えば決して褒められた設備ではないが、地上高30mというのが唯一にして最大の武器だ。マンションのベランダは、言ってみれば「高い場所に置いた小さな傘」のようなもので、傘そのものは小さくても、高い所に掲げれば遠くからでも見つけてもらえる。今回もその恩恵で、南米や北米まで届いてくれた。

結果 ― バンド別の内訳

BandQSOsPtsCtyPt/Q
7MHz2613.0
14MHz102862.8
21MHz112582.3
28MHz1616.0
Total2465162.7

スコア:65点 × 16マルチ = 1,040点

面白いのは Pt/Q(1局あたりの点数)だ。28MHzのDU1EG局はたった1局で6点。局数の稼げないバンドほど、当たったときの単価が高い。ハイバンドは「めったに開かない特売日」のようなもので、開いていない日に何度通っても収穫はないが、開いた日に一度入れば大きい。

時間を追ってみる ― 三つの窓

窓その1:深夜0時台、14MHzのヨーロッパ

初日、日付が変わった頃から14MHzでヨーロッパが浮き上がってきた。R4GM、RW1A、HA4FB、RA5G、OH0Z、RA3OA、UZ7C、RW1F ― およそ1時間のうちに8局。ロシア勢が中心だが、ハンガリー、オーランド諸島、ウクライナと、マルチも素直に伸びた。

この時間帯だけは「呼べば取ってもらえる」感触があった。裏を返せば、当局の50Wで通用したのは、この一時間だけだったということでもある。

窓その2:朝7時台、21MHzのアメリカ大陸

朝、14MHzでRC0CDとT88PB(パラオ)を拾ったあと、21MHzに上がるとアメリカ大陸が開いていた。ND8DX/KL7、K6XX、PP5JR(ブラジル)、K3EST、W6AFA、KL5NE。アラスカが2局、そしてブラジル。釣り竿アンテナで南米が入るのだから、この趣味はやめられない。

28MHzに顔を出すとDU1EG(フィリピン)が1局だけ聞こえた。10mはこの1局きり。それでも「開いていた証拠」として、このQSOは記録に残しておきたい。

窓その3:二日目22時台、21MHzの中東と40mの北米

二日目の夜、21MHzで4X1IM(イスラエル)とP3X(キプロス)。朝とは正反対の方向に窓が開いている。同じ21MHzでも、朝と夜では別のバンドだと思ったほうがいい。

そしてそのすぐ後、7MHzでK7ZSD、N9RV。この2局が、今回の最後のQSOになった。

呼び負ける、という現実

正直に書いておく。今回、聞こえているのに取ってもらえない場面のほうが圧倒的に多かった。ハイバンドは信号が弱く、こちらのSは振れているのに、呼んでも呼んでも空振りが続く。50Wと簡易アンテナでは、パイルの中で存在に気づいてもらえない。

拾ってもらえた場面には共通点があった。パイルが薄い、開き始めか、開き終わり。全員が群がっている真っ最中に割って入るのではなく、その少し前か少し後に呼ぶ。ログの24局は、ほぼすべてその隙間で成立している。

そして、撤収

二日目は強風と強雨。ベランダの釣り竿アンテナが風にあおられ、これ以上は危険と判断してアンテナを撤去した。コンテストは途中終了である。

マンションのベランダから物が落ちれば、それはもう趣味の失敗では済まない。撤収を決めた時点で点数は伸びなくなったが、後悔はしていない。アンテナはまた上げられるが、事故は取り返しがつかない。この判断だけは、毎回きちんとできる局でいたいと思う。

AA PHONEという味わい

このコンテストのナンバーは「RS+オペレーターの年齢」である。当局は 66 を送り、相手からは 79、77、71、64、52… と返ってくる。数字を交換するだけなのに、そこに相手のハムライフの長さが透けて見える。SSBで肉声を聞きながら年齢を交換するというのは、なかなか他にない体験だ。今回もT88PB局の 79 に、思わず姿勢を正した。

もっとも、年齢を送りたくない局のために「01」(ゼロワン)を送る選択肢が用意されている。今回もBG5IOG局から 01 が返ってきた。実に潔い。

余談 ― 昔の「いきなはからい」

この 01 という逃げ道、昔はもう少し洒落ていた。YLは「00」を送ることになっていたし、マルチオペ局はオペレーター全員の年齢の平均を送っていた。年齢を聞かないのが礼儀という配慮と、クラブなら平均でごまかせるという遊び心。あの頃のルールには、たしかに粋なはからいがあった。

今年2026年の規約では、

シングルオペ:年齢 または 01
マルチオペ:コンテスト開始時点の平均年齢 または 01

になっている。たとえば25歳+35歳なら平均30歳なので、PHONEなら5930、年齢を出さない場合は5901。
今はどちらも「01」でOK。合理的といえば合理的だが、00 が返ってきたときの「あ、YLさんだ」というあの小さな高揚は、もう味わえない。ちょっと残念だなあ、と思う。
「00」ではなく「01」にしたのは、00はCWでもPHONEでも送受信が簡単すぎて有利になるため、それを避ける意図だったと公式では説明されている。

なお現行規約では、年齢を送ったJA局を対象に世代別オーバーレイ賞(20歳未満/20〜40/40〜60/60〜80/80歳以上の5区分)が設けられている。当局は 66 なので「60歳以上80歳未満」の区分。年齢を送るという行為そのものが、ちゃんと競技の一部になっているわけだ。この設計は今でも好きである。
世界的なDXコンテストで「How old are you?」を48時間ひたすら交換する大会って、今考えても相当ユニークだと思う。

スコアは1,040点。上を見ればきりがない。それでも、50Wと5mの釣り竿で、EU・北米・南米・中東・東南アジアまで届いたという事実は残る。設備が小さいほど、コンディションの開閉が手に取るようにわかる。それがこの装備の、ささやかな役得だと思っている。

次回は、ハイバンドが開いた瞬間にもう少し粘れるように。そして天候だけは、どうか味方してほしい。

73 de JI1ALP

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