2026年8月30日日曜日

【ハムフェア2026】IC-7110を見てきた

【ハムフェア2026】IC-7110を見てきた ― FTX-1 optima-50と並べると「思想の違い」が見えてくる

昨日、ハムフェア2026に行ってきた。例年より人が多い。特に海外からのハムが目立っていて、通路のあちこちで英語が聞こえてくる。会場の空気そのものが少し変わったな、という感じだった。

これまでの当局は、JARL登録クラブメンバーとして、受付やMAP・新聞の配布といった裏方に回ることが多かった。今年は久しぶりに、HAM仲間とのんびり会場を歩けた。裏方も楽しいのだが、客として回るハムフェアはやっぱり格別だ。

今回の楽しみは3つ。

  • 新製品・新商品の展示確認
  • CQオームブースでの MK-705/Final Edition50 試作品の確認と試し打ち
  • ジャンク発掘と、ブースの皆さんとのコミュニケーション

どれも当たりだったのだが、書き出すと長くなる。今回はアイコムの新製品「IC-7110」に絞ってまとめておきたい。






結論:この2台は「似て非なるもの」だ

IC-7110とFTX-1 optima-50は、スペック表を並べると同じカテゴリーに見える。だが設計思想はまったく違う。

IC-7110は「操作部を自由に置ける、徹底したセパレート機」。FTX-1は「操作部そのものが無線機で、必要に応じて出力を足していく変身機」。カバーする周波数もモードも似ているのに、目指している運用スタイルが別物だと感じる。

そして価格帯で素直に比べるなら、FTX-1 optima-50(税込237,600円)の対抗馬は100W版のIC-7110ではなく、全バンド50Wの「IC-7110M」と見るのが自然だと思う。

大事なポイントを3つに絞ると、こうなる。

ポイント1:IC-7110は「現代版IC-7100」。操作部だけでは電波は出せない
操作部と本体を必ずケーブルで接続して使う。フィールド運用に向く、という表現は「操作部だけでQRPができる」という意味ではなかった。

ポイント2:FTX-1最大の武器は「内蔵ATU」と「バッテリー6W運用」
50WパワーアンプSPA-1MにHF/50MHz帯の高速ATUが入っている。しかもフィールドヘッドを外せば、付属バッテリーだけで6W運用ができる。IC-7110には真似のできない芸当だ。

ポイント3:IC-7110は「つながる機能」で一歩先に出た
Wi-Fi、Bluetooth、LAN端子、USB Type-C。さらにCWの欧文・和文デコード。ネットワーク時代のRIGとしての作り込みは、こちらのほうが厚い。ただしATUは非搭載である。

スペック比較表

現時点で公表されている情報をもとに、当局なりに並べてみた。
IC-7110はまだ未発表項目が多いので、そこは「未発表」と正直に書いてある。

項目ICOM IC-7110 / IC-7110MYAESU FTX-1 optima-50
コンセプトHF~430MHz オールモード・完全セパレートHF~430MHz オールモード・フィールド/モービル
対応バンドHF / 50 / 144 / 430MHzHF / 50 / 144 / 430MHz
モードSSB / CW / RTTY / AM / FM / D-STARSSB / CW / AM / FM / C4FM
ラインアップIC-7110(HF/50=100W、144/430=50W)
IC-7110M(全バンド50W)
IC-7110S(HF=10W、50MHz以上=20W)
Field(10W)
optima-50(10W/50W)
DX(100W、固定用)
受信方式IC-705などと同じダイレクトサンプリング方式48MHz未満はダイレクトサンプリング、以上はシングルコンバージョンIFサンプリング
ディスプレイ4.3インチ カラータッチ4.3インチ カラータッチ
スコープリアルタイムスペクトラム+ウォーターフォール約30fps、3DSS、ウォーターフォール、オーディオスコープ
2波同時受信○ HF+144、HF+430、144+430 など異バンド○ HF/V、HF/U、V/U、V/V、U/U(HF/HFは不可)
CWデコード○ 欧文・和文(IC-7300MK2譲り)公式仕様に記載なし
FT8支援○ FT8簡単設定○ PRESETモード
デジタル音声/網D-STARC4FM/WIRES-X
APRS現時点で発表なし
Wi-Fi○ 内蔵(RS-BA1リモート、オンライン更新に対応)記載なし
Bluetooth○ 内蔵BU-6がオプション
GPS/GNSS海外サイト情報では内蔵(国内未確認)FGPS-5がオプション
LAN端子ありなし
USBUSB Type-CUSB Type-C(CAT 3系統)
メモリカードSDカードmicroSD
スピーカー操作部に内蔵(本体側にはなし)2WAYフロントスピーカー+本体2.5W
分離完全セパレート、3.5mケーブル付属(5mはオプション)フィールドヘッドをPA部から分離可能
操作部だけで送受信× 不可◎ 可能
バッテリー運用×◎ 6,400mAh付属で6W・約9時間
外部13.8V接続で10W
内蔵ATU× 非搭載(外付けAH-6を推奨)◎ HF/50MHz高速ATUをSPA-1Mに内蔵
外形寸法正式値未発表。会場での概測で操作部 約198×83×39mm、本体 約168×58×240mm213×89×240mm(フィールドヘッド含む)
ヘッド単体 213×89×55mm
重量未発表約3.9kg(ヘッド単体は約1.25kg)
50W時消費電流未発表約16A(HF/50MHz 50W)
価格(税込)未発表237,600円(Field 159,500円/DX 231,000円)
発売時期未発表。和歌山工場で量産準備中との話発売済み

※IC-7110の欄は、会場での確認とアイコムの発表、および報道された情報をもとにしている。受信感度・選択度・重量・消費電流・価格・発売日はいずれも未発表だ。





「現代版IC-7100」と「変身する無線機」

この2台を並べて眺めていて、いちばん面白かったのがここだ。

IC-7110は、型番のとおりIC-7100(2013年発売、2025年5月生産終了)の後継機である。操作部はあくまでコントローラーで、RFユニットは本体側にある。操作部だけを持って外に出ても、それは無線機にならない。会場でも「操作部と本体を必ず接続した状態での運用になります」と明言されていた。

対してFTX-1は、フィールドヘッドそのものが10W級のトランシーバーだ。必要に応じて50WのPAをドッキングする。

FTX-1 optima-50
6Wポータブル → 10W移動 → 50Wモービル =「変身する無線機」

IC-7110M
操作部+50W RFユニット =「徹底したセパレート無線機」

身近な例えでいうと、FTX-1はノートPCだ。それ単体で完結して動くし、ドックにつなげばデスクトップ並みに使える。IC-7110はデスクトップPCとモニター+キーボードの関係に近い。モニターだけ持ち出しても何も映らないが、その代わり本体をトランクや机の奥に押し込んで、手元は薄い操作部だけ、という置き方ができる。

どちらが偉いという話ではない。「持ち出したいのか」「設置したいのか」という、まったく別の問いに対する答えなのだ。

アパマン・FT8・6m目線で見るとどうか

IC-7110Mが魅力的なところ

まず、Wi-Fi、Bluetooth、LAN、USB Type-Cが最初から載っているのが強い。RS-BA1によるリモート運用も想定されていて、ネットワークRIGとしては一歩先に見える。Wi-FiでインターネットにつなげばファームウェアやD-STARレピータリストが自動更新される、というオンラインアップデート機能も標準だという。

そして、アイコム自身がFT8の簡単設定を明記している。PCとのUSB接続やLAN/Wi-Fi周辺がどう実装されるかによっては、かなりFT8向けの扱いやすいRIGになる可能性がある。当局のようにベランダから細々とやっている人間には、ここは効く。

加えて、CWの欧文・和文デコードまで載ってくる。IC-7300MK2で好評だった機能がそのまま来た形だ。それと、地味だが効きそうなのが操作部フロントのスピーカーボタンのイルミネーション。夜間のモービル運用を明確に意識した設計で、本体を後ろに追いやっても手元で音が聞ける。よく考えられている。

FTX-1 optima-50が魅力的なところ

これはやはり内蔵ATUだ。HF/50MHz帯の高速ATUがSPA-1Mに最初から入っている。アイコムは逆に本体を小さくするためATUを載せず、外付けのAH-6を推奨する方針である。

そして、フィールドヘッドを外して、6,400mAhのバッテリーだけで6Wで約9時間。外部13.8Vをつなげば10W。これはIC-7110には真似できない、FTX-1最大の武器だと思う。公園でも河原でも、リュックから出したらそれで運用が始まる。

もうひとつ面白いのが「2波受信」

FTX-1はかなり強烈で、HF/V、HF/U、V/U、V/V、U/Uまで対応し、C4FM同士の同時再生までできる。ただしHF/HFは不可だ。

IC-7110も、HF+144MHz、HF+430MHz、144+430MHzといった異バンドの2波同時受信が発表されている。背面には受信2系統ぶんのスピーカー出力とアンテナ端子が並んでいた。HF帯でCWコンテストをやりながら、144MHzでローカルの声を聞く――そういう使い方を考えると、当局にはなかなか刺さる。

気になるところ、そして価格

ATU非搭載。本体をコンパクトにするための判断だとは理解できるのだが、うーむアイコム、そこは付けてほしかったぞ、と言いたくなる。当局にとって、移動運用やアパマン運用で屋外やベランダにアンテナを立てるような状況だと、ATUは「あると便利」ではなく「ないと始まらない」装備なのだ。外付けAH-6を足せば済む話ではあるが、その分だけ財布と設置場所に効いてくる。

そして最大の未知数が価格である。現時点でアイコムからは何も発表されていない。

参考までにヤエス側の値付けを見ると、FTX-1 Fieldが159,500円、optima-50が237,600円、DXが231,000円。実は100W機のDXより、50W機のoptima-50のほうが高い。SPA-1Mとバッテリーが両方付いてくるのだから当然といえば当然なのだが、この価格表は一度眺めておく価値がある。

そのうえで、IC-7110Mが20万円台前半~半ばに来るかどうか。ここでoptima-50との勝負が一気に熱くなると思う。

まとめ

今の情報だけで選べと言われたら、当局の答えはこうなる。

  • 移動運用・フィールド運用を重視するなら → FTX-1 optima-50
  • 固定+モービル、FT8とリモート運用を重視するなら → IC-7110M

個人的にいちばん「おっ」と思ったのは、IC-7110がCW欧文・和文デコード、Wi-Fi、Bluetooth、LANを全部入れてきたことだ。IC-7100の後継として、単に置き換えるのではなく、13年ぶんの時代を丸ごと詰め込んできた印象がある。

ただし、繰り返しになるがIC-7110の情報はまだ不完全だ。重量も、消費電流も、受信性能も、価格も、発売日も出ていない。正式スペックが出たら、あらためて表を見直したいと思う。

それにしても、こういう「並べて悩む時間」がハムフェアの後のいちばんの楽しみだったりする。買うかどうかはさておき、である。

参考:hamlife.jp「【ハムフェア2026】アイコム、新製品『IC-7110』をハムフェア会場で世界初公開」/八重洲無線 FTX-1シリーズ製品ページ

73 de JI1ALP

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